実はハイブリッドじゃないS-ハイブリッドの裏話とハイブリッド方式の種類をご紹介

くるまるです。

ポルシェ博士と
ハイブリッドカーの関係を
詳しく調べていて、
ふと思い出したことがありました。

そういえば、
あの大人気の車は
『ハイブリッド』なんて言ってるけど、
ハイブリッドカーとは
言えないんじゃないのか・・・?
という事です。

今や自動車メーカーのほとんどが
ハイブリッドカーを設定しており、
珍しいものはなくなってきました。

しかし、
一口にハイブリッドカーといっても
車によって
燃費も性能も価格も差が
大きいですよね?

実は車によって
ハイブリッドシステムは
全然違う装置になっています。

なので働きが違うので
燃費も様々ですし、
コストも様々です。

まずはハイブリッドカー
というものがどういう物なのか?

説明しようと思います。

ハイブリッドのシステム(装置)は大きく分けて3種類

まず、
ハイブリッドカーの定義は
人やメーカーによって
違う事もありますが、

『エンジン』と『モーター』

といった具合に
2つの動力源を元に
エネルギーを発生させて
車を走らせるものです。

『人力』と『モーター』

なんてのもハイブリッドです。

電動アシスト自転車
がそうですね。

現在自動車向けに活用されている
ハイブリッドシステムは
主にガソリンかディーゼルを
燃料としたエンジンと
電気で動くモーターを組み合わせ、
自動車の動力とするものです。

大きく分けて
シリーズ式、
パラレル式、
スプレッド式、
という3種類があり
それぞれに特徴があります。

以下はそれぞれの説明ですが

わかりやすいように
省略したりしていますし、
他の人と内容が違うこともあります。

参考程度に見てください。

◆ シリーズ式(直列式)

シリーズ式は
エンジンを発電のみに使用、
発電した電力を活かして
モーターを回し、
モーターだけの力で車を動かします。

前回ご紹介した
ローナー・ポルシェ ミクステや
日産のe-POWERが
これにあたります。

エンジンは発電だけなので
制御が簡単です。

極端な話ONかOFFだけで
事が足りるので、
ガソリンエンジン以外にも
ディーゼルエンジンや、
天然ガスを燃やして
エンジンを稼働させる
ガスタービンエンジンなどが
利用できるのが特徴です。

タービンエンジンなら
灯油や廃油なんかも
利用は可能です。

バスや電車、
船舶などに利用されてきました。

エンジンは駆動
(車を動かす力を与える事)に
関係していないので、
人によっては
『電気自動車』
に分類する人もいます。

◆ パラレル式(並列方式)

駆動にエンジンと
モーター2つの動力を活用します。

エンジンは
電気モーターに比べると
低回転時に
パワーを出すのが苦手です。

電気モーターは
低回転から
パワーを出すのが得意ですが
高回転は苦手です。

特徴をいいとこどりして、
助け合いをしているのが
パラレル式ハイブリッドカー
です。

メインはエンジンで、
弱い部分を
モーターの働きでアシスト
するのが
このパラレルシステムの特徴です。

エンジンに
モーターが連結されていていて、
モーターは駆動に
直接つながっていないので、

エンジンだけの走行はできますが、
モーターだけの走行はできません。

 

また、
ハイブリッドシステムの特徴として
1台のモーターがあれば成立するので、
一般的に軽量化のため
モーター(発電機)は
1台だけになります。

この為、
発電と駆動が同時にはできません。

ホンダのインサイトや
初期のフィットハイブリッド
(IMAというシステム)が
この方式を採用していました。

◆ スプリット式(動力分割方式)

エンジンやモーターの力を
発電や駆動に
自由に動力を分割できるシステムです。

エンジンを発電にも駆動にも使え、
パワー配分を変えることができます。

『動力分割装置』というものを
設置している複雑なシステムですが
システムの自由度が高く、
エンジンンもモーターも
効率よく動かす事ができます。

プリウスをはじめとした
多くのトヨタ車で採用されています。

エンジンだけ、
モーターだけといった走行も可能です。

他にもこれらを応用した
ハイブリッドカーが
たくさん開発されています。

例えば、
フィットがモデルチェンジして
ハイブリッドシステムが

『IMA』というシステムから

『i-DCD』というシステムに

変更され、
劇的に燃費がよくなった理由を
簡単に説明すると、

エンジンとモーターの動力を
切り離せる構造に変更して、
部分的に
シリーズ式の仕組みを取り入れて
モーターだけの走行を可能にしたり、
トランスミッションに
分配装置のような仕組みを持たせて、
スプリット式の仕組みを
取り入れたりしているからです。

もっと単純にいうと、
ホンダの『i-DCD』は
ベースはパラレル式だけど、
シリーズ式やスプリット式のような
工夫を加えている。

という事です。

エネチャージ

ハイブリッドカーではない
普通の自動車も
エンジンを動かせば、
エンジン部品の一部である
発電機(ジェネレーター、オルタネーター)
で発電をしています。

発電された電気は
通常バッテリーへ充電されます。

これは

  • ライトやウィンカー
  • エアコンのファン
  • オーディオ
  • ルームランプ
  • スパークプラグ
  • エンジンスターター

などの電装品へ
電気を供給するためです。

中でもエンジンスターターは
たくさん電気を消費します。

ハイブリッドカーが
出回り始める前に増えたのが
アイドリングストップ車です。

これは信号の度に
エンジンが止まるので、
ガソリン消費は抑えらえますが、
エンジンスターターが
たくさん電気を消費しますから、
バッテリーは
充電不足気味になって
劣化も早くなります。

そこで、
効率的に発電して、
エンジンスターターへの
電源供給に特化したのが
スズキのエネチャージです。

それまでの車は
発電機を回すのに
エンジンの回転しか
使用していませんでした。

つまり、
発電量を大きくしようと思うと、
エンジンを
より多く回す必要がありました。

長く車に乗らないと
バッテリーが充電されず、
自然放電でエンジンが
かからなくなる理由はこれです。

また、
近距離ばかり車を使用していると
バッテリーが弱くなるのは
発電量よりも
消費電力が多いからです。

しかし、
エンジンをより多く回すとなると
燃料も多く消費するので
燃費はよくなりません。

また、
発電機の発電能力の高いもの
にしようとすると
エンジンに負担がかかり、
燃料を多く消費してしまうので、
これも燃費向上の妨げになります。

そこでどうするかというと、
減速時に
発電機を駆動部分に連結させて
発電機を回そう(回生発電)
というもの。

坂道を下る時に
自転車のライト(ダイナモ式ライト)
をつけながら下ると
自転車をこがなくても発電されて
ライトは点灯しますよね?
あれと同じ考えです。

そこに急速充電、
急速放電
が得意な
エネチャージ用の
リチウムイオンバッテリーを
追加増設

することによって
ジェネレータで発生した
電力を急速充電。

エンジンスターターへの
電源供給
(大きな電力=急速放電が必要)
もリチウムイオンバッテリーから
行うのがエネチャージの仕組みです。

効率的なエネルギーの生成と、
電装用バッテリーへの負担を
減らしていますね。

Sエネチャージ

そのエネチャージに
発電機を兼ね備えた
エンジンスターターを
組み合わせたのが

Sエネチャージです。

Sエネチャージは
アイドリングストップから
エンジンをスタートさせる際に
この発電機兼エンジンスターターで
エンジンをアシストします。

エンジンスタートと同時に
車を押し出すイメージです。

昔のマニュアルミッション車は
安全装置がついていませんでした。

ギアを入れ、
クラッチをつないだまま
エンジンスターターを回すと、
車が少し動いてしまいました。
(オートマの感覚でエンジンかけようとして、いきなり車が動くのでちょっと焦りますw)

あれを意図的に
やっているような感じです。

スズキはハイブリッドとは言っていないSエネチャージ

エンジンスターターを
エンジン始動時に余分に回し、
発進をアシストするだけですから、
モーターが果たす役割は短く、
小さいので、
スズキもこのシステムは
ハイブリッドと言っていません。

またスズキは、
『マイルドハイブリッド』
というシステムを用意しています。

これはSエネチャージに加えて、
100km/hぐらいまでの加速や
走行中の再加速を行うのに
エンジンスターター用モーターを
回すものです。

微力ながら
モーターがエンジンを
サポートする
パラレル式ハイブリッドですが

ホームページでも
駆動用モーターが装備されている
ハイブリッド(フルハイブリッド)
と分けて、違いを説明しています。

疑惑のS-ハイブリッド

さて、
日産セレナという
大人気のミニバン車があります。

前型のC26には
『S-ハイブリッド』
と名前の付いた
グレードがありました。

S-ハイブリッドの構造はほとんど
Sエネチャージと同じです。

アイドリングストップから
再発進時にスターターを余分に回し、
前へ押し出すシステムです。

ですが、
Sエネチャージとの大きな違いは

リチウムイオンバッテリーを
搭載していないところです。

鉛バッテリーは
急速充電、急速放電が苦手なので
アシストパワーも
大したパワーが出せません。

そしてスズキの軽自動車や
コンパクトカーと違って、
セレナはミニバンなので
車体が重たいです。

これじゃあ、先程例に挙げた
「昔のマニュアルミッション車でギア入れっぱなしの状態でエンジンスタート。」
と大差ありません。

前回ご紹介した記事でも
セレナ ハイブリッドは
他のハイブリッドカーと比べて
燃費がよくありません。

ハイブリッドシステムと考えると、
あまり効果的な
方法ではないという事です。

でも、
日産はホームページで

「燃費のよさとコンパクト性を両立した、新しいタイプのハイブリッドシステムです。」

と説明して

スマートシンプルハイブリッド
略して『S-HYBRID』
ひょっとしたら
ハイブリッドの中でも
よさげな感じがする
ネーミングをしちゃってます。

ライバル車のノア、ヴォクシーと
同じようなハイブリッドカー
だと思って
購入しているユーザーも
いるんじゃないでしょうか? 

S-ハイブリッドは
Sエネチャージよりも
コストがかかってなくて
効果の低いシステムです。

しかもスズキの
マイルドハイブリッドのような

走り出してから
モーターからのサポートは
ありません。

まぁその分値段は控え目で、
新車価格では

S-ハイブリッドの有り、なしは
¥50,000強の差です。

これがS-ハイブリッド
最大の強みです。

システムの費用が安いです。 

モデルチェンジしたC27型セレナには
S-ハイブリッド
と名前の入ったグレードは無くなり、
最下位グレード『S』を除いて
全てに装備されています。

新型も最下位グレード『S』と
その上のグレード『X』を
比べると約¥50,000強の価格差です。

▼新型のセレナにはグレードにS-ハイブリッドの名前が設定されていない。

前モデルの

日産:セレナ [ SERENA ] ミニバン/ワゴン Webカタログ トップ

には『スマートシンプルハイブリッド』
と前面に推し出していますが、
新型セレナのトップページ、
特徴ページを見ても
『スマートシンプルハイブリッド』
には言及されていません。

イラスト図で見ると
バッテリーが二つあるような・・・?

でもそのあたりの記述は
ありません。

もしかして
リチウムイオンバッテリーを
追加したのか!?

と思い、
この点を調べてみると、

鉛バッテリーを2つ搭載

アイドリングストップによる
劣化を起こしても
個別に交換できるように
なっているようです。

アイドリングストップ側バッテリーは
一応「リチウム配合バッテリー」

のようです。

でも基本は鉛バッテリー。
ウーム、なんか雑な感じがする・・・。

まぁ、
一瞬でもモーターの力を
借りているのだから、
ハイブリッドと言えば
そうかもしれませんが、
私はS-ハイブリッドは
ハイブリッドではなく、

アイドリングストップに特化した
低燃費システム

だと思います。

エネチャージ的なネーミングの方が
ユーザーの理解度が
高くなるのではないか
と考えます。

まとめ

新型セレナには
ノートと同じ
e-POWER車(シリーズハイブリッド)も
設定されるようですから、
今セレナを検討している方で
燃費を重要視する場合は
これが出てからの購入を考えるほうが
良いかもしれませんね。

ノートに採用した
シリーズハイブリッド方式だと
重いミニバンを動かすような
ハイパワーは期待できませんから、
エンジンにクラッチをつけて
パラレル式を併用するような
ハイブリッドシステムに
してほしいところです。

各社
『ハイブリッド』というキーワードは
売り文句として
現在強力なキーワードなので
使いたいのはよくわかります。

しかし、
実際ホームページにも
詳しくその内容が
書かれていませんから、
ディーラーの営業マンに
聞いたところで
ちゃんと説明できる人は
少ないでしょう。

ハイブリッドカーを選ぶ時には

「とりあえずハイブリッドだから燃費が良いだろう?」

なんて単純に思わず、
どういうシステムなのかを
よく知ったうえで
購入するのが
後悔しない賢い買い方だと思います。

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